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照明デザイナーによるライトの考察

私は自分の仕事を上手く言えない。

「Lighting Designer」を完璧に発音できないのである。舌で口の中の天井を、後ろから撫でるようにライティングと発音しなければならない。時折、気を抜いて話すと Writing となり、外国人から「何を執筆中なの?」となる。このように日本人には難しい発音の「ライト」というもの。実にさまざまな意味を持つ。

正しいことを示す Right、右を示す Right、書くことを示す Write、軽いことを示す Light、そして光の Light。これすべて日本ではライトと発音する。

Right には「真っ直ぐな、正しい」という意味があり、Right hand というように心臓と反対側にある手が正しいという語源があるらしい。だから右が正しい!?ふたつの意味は関係性があるようだ。Write はもともと木や樹皮を傷つけて文字を彫るというラテン語が語源で、日本でも「書く」という言葉は「掻く」に通じるらしい。すでに言葉遊びになりつつあるか…。Light はラテン語で「明るい」を示す Lux が語源で、さらに古ドイツ語の Leicht に「軽い」という意味があり、長い歴史の間に合体したものらしい。その言葉が Luxury「贅沢な」という言葉に変化し、明るいものは贅沢であるということに通じていくようだ。また、博学で何もかも理解しているような人のことを「未来に明るい」と表現するが、これまた明るいことは正しいに通じるのであろう。さらに Light の前と後ろにいろいろ付けて Enlighten という言葉に発展していくと「教える、啓発する」という言葉になり、今度は教えるために伝えていく Write に通じてくる。全く違うようで、何かすべて曇りのないことへ導いてくれる共通言語のような気がするから不思議だ。

私の仕事は照明デザイナー。

「計算された光を使い、正しく環境を整えるためにデザインを描いている。そのことが人々の気持ちを軽くし、明るい未来に繋げ、贅沢な気持ちへと変化させてくれる。」

ライトのコンセプトがすべて入った!さて、これ英語で書いたらどうなるか…。

「Write right light.」

単純だが、この3つのライトで私のテーゼに通じる言葉に合体したのである。素晴らしい!しかし残念ながら、やっぱり発音できない。

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