アクロス福岡
南側の公園が連続して空に昇って行くような大階段は、世界に類を見ない。グリーン建築の先駆的作品であり、都心における市民の癒しでもある。
自然現象をつくりだす緑化建築
アクロス福岡は、自然環境そのものを取り込んだ建築だと言えます。ステップガーデンと名付けられたこの壮大な緑化部分の管理は最低限のメンテナンスのみに留められており、枝葉がどんどん伸び、たまった落ち葉は土に還っていく、まさに自然そのものの様相を見せています。都心にありながら山おろしの風が吹くほど、アクロス福岡は自然に近い環境なのです。
緑の階段 –ステップガーデン–
アクロス福岡の前に広がる天神中央公園と連続するようにステップガーデンは配置され、憩いの空間を提供しています。竣工当初植樹された76種類3万7千本の樹木は、その後15年で120種類5万本程度にまで達しました。植樹によるのではなく、まるで自然の山のように、野鳥が種を運ぶことによって樹木が今も増え続けているのです。
「オープンスペースが残った」
アクロス福岡の位置には旧福岡県庁舎がありました。県庁を移転するにあたり、福岡市国際会館(仮称)提案競技が1989年に実施され、それがアクロス福岡の始まりになりました。そのコンペの最終選考に残ったのはエミリオ・アンバーツ×日本設計×竹中工務店のチームのほか、黒川紀章、芦原太郎、日建設計、三菱地所、菊竹清訓など錚々たるメンバーでした。最終選考の末、都市に緑のオープンスペースを提案したアンバーツのチームが一位を勝ち取りました。
「関係者インタビュー① ~眠らないプロジェクト~」
現在のアクロス福岡の外観も特徴的ですが、コンペの検討初期案はより独特でした。エミリオ・アンバーツが提案した初期の案では建物の中央に滝があり、緑の階段も今よりずっと段数が多く滑らかでした。また、明治通り側に大きな開口部をつくることで、博多祇園山笠の山車をエントランスホールの中まで入れることも構想していたそうです。
※インタビュー①,② 対象者 川口英俊氏
エミリオ・アンバーツ&アソシエイツ 元スタッフ
現在アーキテクト・キューブ代表取締役、東京都市大学准教授
アクロス福岡の構想を担当したのはアメリカに事務所を構えるエミリオ・アンバーツ&アソシエイツでした。日本で設計を担当した日本設計・竹中工務店とは12時間の時差があり、例えば、アメリカが夜中の時間には日本がプロジェクトを進め、朝起きると大量のFAXが届くといった、24時間進行する眠らないプロジェクトだったそうです。
「関係者インタビュー② ~初期の構想~」